【コラム】まるで『もののけ姫』の世界? 日本唯一の「たたら場」現存遺構を歩く、冒険と歴史の家族旅

森の奥深く、土と木と炎の匂いがする場所へ――。

子供の頃、映画『もののけ姫』を見て、あのアシタカやサンが駆け抜けた森や、エボシ御前が率いる「たたら場」の熱気に心を震わせたことはありませんか?

もし、あの世界観に「触れられる」聖地のような場所が実在するとしたら。

今回は、島根県雲南市吉田町に残る、日本で唯一現存する製鉄遺跡と、その歴史に深く浸る特別な旅のご提案です。

 

伝説の龍が棲む「龍頭が滝」へ

旅の始まりは、森の奥深くから。

松江自動車道「雲南吉田IC」から車を走らせること約20分。杉林の遊歩道を抜けた先に現れるのが、中国地方随一の名瀑「龍頭が滝(りゅうずがたき)」です。

 

 

落差40メートルの雄滝と、女滝からなるこの滝。ただ眺めるだけではありません。

ここの最大の特徴は、滝の裏側に入れる「裏見の滝」であること。 岩窟の中に身を置くと、目の前を水のカーテンが轟音と共に落ちていきます。水飛沫を浴びながら見るその景色は、まさに異世界への入り口。

 

 

「ねえ、あそこの岩陰に、白い小さな精霊(コダマ)がいそうじゃない?」 そんな会話が自然と生まれるほど、神秘的な空気に満ちています。お子様にとっては、ちょっとした探検隊気分を味わえる最高のアトラクションになるはずです。

 

伝説の製鉄「たたら」の煙が上がった場所

島根県の山間部、雲南市吉田町。ここはかつて、日本古来の製鉄法「たたら製鉄」で栄えた場所です。

映画の舞台のモデルについては諸説あり、公式に「ここだ」と断定されている場所はありません。しかし、この吉田町に足を踏み入れると、ファンならずとも「あ、ここは……」と息を呑む光景が広がっています。

 

圧倒的迫力。「菅谷たたら山内」

その筆頭が、国指定重要有形民俗文化財「菅谷(すがや)たたら山内(さんない)」です。

「山内」とは、製鉄に従事する人々が暮らした集落のこと。

ここには、日本で唯一現存する「高殿(たかどの)」と呼ばれる製鉄工場が残っています。

巨大な柱、土の壁、そして中心に鎮座する炉。

一歩中に足を踏み入れると、いまにもふいごを踏む音が聞こえてきそうな、重厚な空気が漂います。エボシ御前たちが鉄を作っていたあの活気と熱気が、時を超えてリンクするような感覚。

お子様にとっても、教科書で見る「歴史」ではなく、目の前にそびえ立つ「冒険の舞台」として映るはずです。「昔の人は、ここで土から鉄を作っていたんだよ」と話せば、きっと目を輝かせることでしょう。

 

学びを深める「鉄の歴史博物館」

高殿の迫力に圧倒された後は、近くにある「鉄の歴史博物館」へ。

ここでは、実際にどのように鉄が作られていたのか、その科学と歴史を学ぶことができます。

実際に使われていた道具や、鉄の塊(ケラ)を見ることで、先ほどの高殿での体験がよりリアルな知識として定着します。夏休みの自由研究のテーマとしても、深みのある題材になります。

ここでしか見られない、たたら場建設時の記録も見ることができ、大人もついつい長居してしまう素敵な空間です。

 

「見る」だけでなく、歴史に「住まう」という選択

さて、日が暮れてきました。

せっかくここまで歴史の深い森に迷い込んだのですから、現代的なビジネスホテルに戻って現実世界に引き戻されるのは、少しもったいないと思いませんか?

この「たたら」の物語には、続きがあります。

かつて、鉄山を取り仕切った有力者や、そこで働いていた人々が暮らした町並みが、今も吉田町には残っているのです。

その一角に、まるで時計の針を止めたような宿があります。

 

記憶をたどる宿「RITA 雲南吉田」

「菅谷たたら山内」から車で5分。かつての鉄山師・田部家に仕えた人々が住んでいた長屋などをリノベーションしたのが、「RITA 雲南吉田」です。

 

ここは単なる宿泊施設ではありません。「森とたたらの記憶をたどる」をコンセプトにした、町全体に溶け込むような分散型ホテルです。

 

家族で過ごす、プライベートな歴史空間

特におすすめなのが、一棟貸し切りに近いスタイルで泊まれる「長屋」の客室。

隣の部屋を気にすることなく、家族だけの時間を過ごせます。

  • 土間と木のぬくもり: 玄関を開けた瞬間、懐かしいような、それでいて洗練された空間が広がります。
  • 静寂の夜: 窓の外には、静かな吉田の町並み。テレビもなく、虫の声や風の音に耳を傾ける時間は、都会では味わえない贅沢です。
  • プライベートサウナ(一部客室): パパとママには嬉しい、お部屋についたサウナも。歴史の余韻に浸りながら汗を流し、ととのう体験は格別です。

食事は、町の中にある提携の料理屋さんへ歩いて向かいます。

夜の吉田町を家族で散歩する。その道のりさえも、タイムスリップしたような旅の一部になるのです。

 

 

次の家族旅行は、物語の中へ

そこには確かに、映画で見たような「人間と自然と鉄」がせめぎ合い、共存していた息遣いが残っています。昼は「菅谷たたら」で圧倒的な歴史のパワーを感じ、夜は「RITA 雲南吉田」で、その歴史の一部となって眠る。

次の休みは、テーマパークのアトラクションではなく、本物の歴史と物語の中へ、家族で冒険に出かけてみませんか?

 


 

📝 この旅のワンポイントメモ

  • アクセス情報①: 松江自動車道「雲南吉田IC」からすぐ
  • アクセス情報②: 出雲空港から車40分程度
  • 限定5部屋/日: RITA雲南吉田は室数が限られています(全5室)。お早めにチェックを。

RITA雲南吉田の公式サイトTOPページはこちら

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